東北電力が電力供給をおこなう地域では大規模停電が続いている。東京電力が電力供給をおこなう地域では、14日のピーク時にも1,000万キロワットの電力不足が予想され、東京電力は500万キロワット単位で地域ごと順番に停電させる輪番停電で対応する予定だ。被災地域のように物理的に送電線が遮断されている場合は復旧を待つしかないのだが、東電地域のように、単純に電力が不足する場合は、各電力会社間で電力の融通をおこない合うのが通例なのに、今般は、なぜこれが出来ないのか。若干、情報が錯綜しているようなので整理しておく。
1,東京電力はなぜ電力の融通を受けられないか
電力は、その物理的な制約により隣接した事業者からしか融通を受けられない。東京電力に隣接する事業者は東北電力と中部電力の2社。本来は、同じ周波数50ヘルツである東北電力からの供給を期待したいところだが、被災地からの融通は絶望的。もう一方の隣接事業者である中部電力の周波数は60ヘルツであり変電が必要。この変電能力はわずか100万キロワットしかない(今回の電力不足は、中部電力からの融通分を織り込んでいる)。
万が一東北電力の送電線が無事であれば、北海道電力から東北電力の送電設備を使って東京電力に電力を融通する「振替供給」も可能だが、北海道電力と東北電力をつなぐ「北本連系」の能力は60万キロワットしかなく、不足分を補えない。そもそも、北海道電力が電力を融通するなら、東北の被災地が最優先されるべきである。<3月23日追記も参照ください>
nihonchizu_shiro
 
「ねずねずお」様、情報ありがとうございました。  
 
2.節電はするべきか
各電力会社ごとに事情が異なる。
①北海道電力
北海道は、冬期のエネルギー需要に応える必要性から、需要に対する電力供給能力がそもそも過剰ぎみなので、ボトルネックである北本連系限界の60万キロワットくらいは、おそらく現状でも融通できるだろう。つまり、残念ながら北海道電力の地域で一般家庭が節電することにより被災地に協力できる可能性は低い。<3月23日追記も参照ください>今後、節電の必要があれば、あらためてマスコミを通じた要請が出されるだろう。

②東北電力
電気はあらゆるインフラの中で最も早く回復するため、被災地でも徐々に電力の供給が再開されているが、女川原発が停止するなど、当面は東北電力の供給能力不足が続くので、電気が回復した地域でも節電すべきだ。
ちなみに12日の報道 によれば、北海道電力が被災地へ電力の供給を検討しているというから、最大60万キロワットの融通は期待していいだろう。<3月23日追記も参照ください>

③中部電力
北海道電力と同じ理由で、変電能力上限の100万キロワットというボトルネックがある以上、残念ながら節電をすることにはあまり意味が無い。今後、節電の必要があれば、あらためてマスコミを通じた要請が出されるだろう。

④東京電力
結果として、東京電力の地域は、域内で1,000万キロワット不足する電力需要分を節電しなければならない。節電というよりも、東京電力は、夕方の3時間程度、輪番停電で強制的に供給をストップすることをほぼ決定しているようなので、当面はこれを受け入れることで協力しつつ、火力発電の再開を待つしかない。<3月23日追記も参照ください>

⑤その他の電力会社
遠隔の電力会社から振替供給しても、結果として中部電力から東京電力への変電能力100万キロワットのボトルネックに阻まれるので、節電しても意味が無い。今後、節電の必要があれば、あらためてマスコミを通じた要請が出されるだろう。
被災地に協力したいという気持ちは大切だが、意味のない行動をしてはならない。もちろん、被害に対して不謹慎であってはならないが、被災しなかった地域では、なるべく日常の経済活動をおこなうことも重要だ。冷酷にも思えるが、日本という経済主体の運営は、休む訳には行かないのだから。

<3月23日追記>
3月22日の電気新聞 によれば、東電は北電から60万キロワット、東北電力から50万キロワット、西日本から100万キロワットの合計210万キロワットの応援融通を受けたとのこと(東電管内の電力需要によって融通を受けている日とそうでない日がある)。
※su様、情報ありがとうございます。

<3月16日追記>

<3月16日9:15追記>
中部電力に電話にて問い合わせ。
筆者からの質問事項「”不要不急の電気の使用を控える”とは、どの程度の節電を協力すれば良いのか」
熱田営業所「平常時どおり使っていただいてかまいません」
春日井営業所「平常時どおり使っていただいてかまいません」

<3月16日9:00追記 各電力会社公式ウェブサイトより>
北海道電力  「北海道と本州を結ぶ送電線(北本連系設備、設備容量:60万kW)の健全性が確認されたことから、本日より、被災地での電力不足を支援するため、本州方面に対して電力融通(最大60万kW)を開始しております」、「北海道内においては電力供給量には十分余裕がございますので、現在のところ、特別な節電をお願いする状況にはございません」
東北電力  計画停電および地震発生による停電等と復旧の見通しについての詳細なコメントあり
東京電力  「緊急逼迫による計画停電の実施と一層の節電のお願いについて」詳細コメントあり
中部電力  「従来から電気の効率的使用についてお願いをさせていただいておりますが、今後も引き続き、不要不急の電気の使用をお控えいただきますようお願いいたします」
北陸電力  節電協力に関するコメントなし
関西電力  節電協力に関するコメントなし
中国電力  「現時点で震災に関連してお客さまに節電をお願いすることはございません」
四国電力  「資源の少ない日本にとって、こうした事態の有無にかかわらず節電はとても大切なことですが、チェーンメールにて当社がお客さまに節電をお願いすることはございません」
九州電力  「当社として、電源供給力は今後も十分確保できておりますが、一方、わが国全体をみた場合、エネルギー需要が逼迫する事態も考えられますので、お客さまには、これまで以上の省エネルギー・節電をお願い申し上げます」
沖縄電力  「今回の震災に関連して当社名でお客さまにチェーンメールを送ることは一切ございませんので、ご注意ください」

<3月13日19:00追記 各電力会社公式ウェブサイトより>
北海道電力  「北海道と本州を結ぶ送電線(北本連系設備、設備容量:60万kW)の健全性が確認されたことから、本日より、被災地での電力不足を支援するため、本州方面に対して電力融通(最大60万kW)を開始しております」、ただし節電協力に関するコメントなし
東北電力  地震発生による停電等と復旧の見通しについての詳細なコメントあり
東京電力  「不要な照明や電気機器の使用を控えていただくなど、節電へのご協力をお願いいたします」
中部電力  節電協力に関するコメントなし
北陸電力  節電協力に関するコメントなし
関西電力  「節電に関するチェーンメールを送ることはございません」「(既に)最大限可能な範囲で電気の融通を行っております」「平素よりお客様には省エネ・節電にご協力を頂いておりますが、今のところ、お客さまに更なる特別な節電をお願いするような状況にはございません。」
中国電力  「11日夕方から、東日本地域に可能な範囲で電気の融通を行っております」「現時点でお客さまに節電をお願いするような状況にはなく、当社名で震災に関連してお客さまにチェーンメールを送ることはございません」
四国電力  「当社名で震災に関連してお客さまにチェーンメールを送ることはございません」
九州電力  「当社は震災に関連してお客さまにチェーンメールを送ることは一切ございませんので、ご注意ください」
沖縄電力  今回の震災についてのコメントなし
<この記事は、拙ブログ  にも同じ内容で掲載していますのでご了承ください。>
原 悟克